オメガ脂肪酸と知力の関係が注目されたのは、1989年にイギリスのクロフォード博士が著書の中で「日本の子供の知能指数が高いのは、魚をよく食べるためではないか」と述べたことが、きっかけでした。それ以来、魚に含まれる油(DHA・EPA)に一気に注目が集まり、世界中で研究が盛んになりました。
そこで分かってきたのは、オメガ脂肪酸は、脳機能の発達や維持に重要な役割を果たしているということ。
これからの高齢社会に向け、食の面から脳の老化予防に役立つ健康成分として、オメガ脂肪酸への期待はますます高まっています。

私たちは脳の中に、数多くのニューロン(神経細胞)を持っています。物を考えたり、覚えたりするときに重要なのは、この神経細胞のネットワーク。下図のように、脳に入った情報は、神経細胞の先端のシナプスを経由して伝えられ、その情報伝達力が強く早いほど、脳の働きは活発で、記憶もしっかり定着します。
この伝達力を支えているのは、神経細胞の細胞膜の柔らかさ。歳とともに物覚えが悪くなったりするのは、この細胞膜が固くなり、流動性が失われることが一因です。オメガ脂肪酸は細胞膜をしなやかにして、情報伝達を円滑にするといわれています。
では、オメガ脂肪酸は「知力」の領域で、具体的にどのような働きが期待できるのでしょうか?興味深い研究データをご紹介します。
オメガ脂肪酸の摂取で、高年齢者の情報処理速度改善の期待
脳の若々しさを測定する方法のひとつに「情報処理速度」をみる手法があります。脳が一定の情報を処理するのに要する速度をチェックするものですが、高年齢者がオメガ脂肪酸(1日当たりARA120 mg、DHA300 mg、EPA100 mg)を約1ヵ月間摂取したところ、情報処理速度に対する有効性を確認することができました。

認知症の発症リスク低減も期待されるオメガ脂肪酸
認知症は、脳の老化がもとで、情報を分析したり、記憶したりする機能を失っていく病変です。高齢社会の中で認知症は年々増えており、これからは毎日の生活習慣の心がけがますます大切になるといわれています。
オメガ脂肪酸と認知症の関連について、少しずつ研究が進んでいます。実際に、右下の研究報告をはじめ、オメガ3系脂肪酸と認知症発症リスク低減について複数の研究結果が報告されています。