
「目の疲れが心身の不調の入口になっているって本当ですか?」

「目の疲れというと軽く考えがちですが、パソコンや携帯電話が欠かせない現代は、目にかかる負担も想像以上。そして“脳の出張所”ともいわれる目の疲れは、首や肩のこり、頭痛など、心身の不調の入口になっていることも少なくありません。そこで、日ごろから目をいたわる大切さと上手なケアのポイントをお答えします。」


私たちは、視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚の五感を使って身のまわりの情報をキャッチし、脳に送っています。実は、 脳に送られる情報の80%以上は視覚を通して集められているともいわれ、物を見る仕組みには脳が深く関与しています。
そのため、慢性的な目の疲れは、目の不調ばかりでなく、心身の症状へと及ぶことも少なくないのです。小さな文字を長時間読んだり、継続的なパソコン作業などにより、肩こりや頭痛など、下記のような不調が起きることは多くの人が経験しているのではないでしょうか。
特に現代の生活は、タブレット端末や携帯電話のような、小さな画面に顔を近づける時間も多く、思っている以上に目に大きな負担を与えています。
近年は、スマートフォンやパソコンなどのディスプレイが明るく見やすいものになっていますが、この明るさを生み出すために使われているのがブルーライト(青色光)です。
ブルーライトは波長が短く目に見える光の中で、最も強いエネルギーを持っているのが特徴で、強い刺激が網膜まで到達します。そのため、長い時間見続けると、眼精疲労のほかに黄斑変性症などの疾患を引き起こす可能性も指摘されています。
さらに、夜間にブルーライトを多く浴びると、脳が覚醒して睡眠の質が悪くなり、体内時計の乱れを招くという報告もあります。


また、普段は気づきにくいのですが、注意したいのが「活性酸素」の影響です。活性酸素は、体内に増え過ぎると細胞を酸化させて老化を進める要因といわれています。
右に挙げたように、私たちの身のまわりには、活性酸素のリスクがいっぱいです。中でも、目が特に影響を受けやすいのが紫外線。目は紫外線を浴びている間、活性酸素の害を直接受け続けることになります。
私たちの体には、こうした活性酸素の害から身を守るための“抗酸化力”が備わっていますが、その機能は加齢とともに低下するため、活性酸素によって目の細胞を傷めやすくなります。また、年齢を重ねると目の表面が乾くドライアイになりやすく、それも目の疲れや老化に拍車をかける原因になっています。












1980年慶應義塾大学 医学部卒業。角膜治療の第一人者。話題の レーシックやドライアイ、角膜移植の指導者として知られる。日本白内障屈折矯正手術学会常任理事。『ブルーライト 体内時計への脅威』 (集英社新書)など著書多数。
