
「いつまでも若々しく、美しい髪を保つ頭皮ケアについて教えてください。」

「年齢を重ねるとともに増えてくる髪のお悩み。女性の場合は、その背景にある要因も様々ですが、頭皮環境を整えることで、いくつになってもすこやかで美しい髪を育むことは可能です。そのために 知っておきたいヘアサイクルのしくみと対策についてご説明いたします。正しい頭皮ケアで、いつまでも若々しく美しい髪を保ちましょう。」

私たちの髪が年齢とともに薄くなったり、抜けやすくなったりする大きな原因が、ヘアサイクルと呼ばれる髪の新旧が入れ替わる周期の変化です。
実は、髪にも寿命というものがあります。毛根のいちばん下の毛球には、髪の毛のもとになる毛母細胞があり、毛母細胞から生まれた早期の髪は、2〜6年の中期・成長期を経て成長していきます。そして後期に入ると自然に抜け落ちて、また新しい毛母細胞をもつ毛球が誕生します。

通常は、髪全体の90〜95%が、この活動中のヘアサイクルの中にあり、残りの5〜10%は活動を休んでいます。しかし、年齢を重ねると、周期の変化で活動中の髪の数が徐々に少なくなり、休息中の髪が増えていきます。特に女性は更年期以降になると、85%ぐらいしか活動しなくなってくるため、髪全体の密度が少なくなってきます。
また、髪を育てるちからも年齢とともに衰えてくるので、髪が細くなったり、うねりやすくなったり、髪の質にも変化が表れてきます。それも、薄毛や抜け毛など、様々なお悩みの原因になるようです。

加齢に伴うヘアサイクルの変化は、誰にでも起こるものですが、進行のスピードには個人差があります。
女性の場合、その大きな要因は生活習慣にあります。例えば、睡眠不足や冷え、ストレス過多、運動不足などの生活が続けば、自律神経のバランスが乱れ、髪の成長にも影響します。さらに、女性ホルモンの減少も関係してきます。このように女性の髪の変化は、男性の場合(下コラム)とは異なり、様々な要因がからみあって進行することが多いようです。
そして、これらがからみあうほど、血流が悪くなる、乾燥するなどのダメージを受けるのが頭皮です。頭皮は肌の一部であり、肌は内臓の鏡≠ニいわれるように体内の状態が表れるところ。頭皮も顔と同じように丁寧なケアを心掛けましょう。体の調子が悪い時は、肌だけでなく頭皮へも影響が…。そうなればヘアサイクルも乱れ、薄毛や抜け毛につながってしまいます。
頭皮は髪の毛を育てる土台。やせた土地では植物が育ちにくいのと同じように、何よりも頭皮が健康でなければ健康な髪は育ちません。


健康な頭皮をつくるためにも、まずは、髪の成長に必要な栄養や酸素をしっかり届けられるよう頭皮の血流を良くしておくことが重要です。
また、頭皮を清潔に保つことも大事です。髪の汚れや余分な皮脂を落とす洗髪を丁寧に。ただし、洗い過ぎは禁物。抜け毛は皮脂のせいとも言われていますが、皮脂には外部の刺激から頭皮を守るバリア機能としての役割があります。毎日洗髪して皮脂を落とし過ぎて、頭皮が乾燥している方も実は少なくありません。かえって紫外線などの刺激を受けやすくなり、薄毛や抜け毛が進行することも。頭皮のうるおいを保ちながら洗うことが肝心です。
活動中の髪を元気に保ち、休息中の毛母細胞の目覚めを促すのも頭皮しだいです。日ごろの頭皮のケアが大切で、そのために育毛剤を利用するのも一つの方法です。








1988年順天堂大学医学部卒業。ロンドン大学王立医科大学院皮膚科研究生、越谷市立病院皮膚科医長などを経て現職。著書に『おとなのヘアケア読本』(技術評論社)などがある。