「最近、耳にしたのですが、疲れのもとに“活性酸素”が深く関わっているって、ホントですか?」
「疲れると、疲労物質の乳酸がたまる――。こんな話を聞いたことがある人は多いかもしれません。ところが近年、乳酸は疲労物質ではなく、むしろエネルギー源であることや、疲れのもとには“活性酸素”が深く関与していることが分かってきました。疲労のしくみと正しい対処法についてお答えします。」
体が発する休息のメッセージ
ひと口に疲れといっても、その種類は様々です。運動などによる身体的な疲れ、ストレスなどによる精神的な疲れ、免疫力の低下などによる疲れがあり、実際はこれらが複合的に絡み合っていると考えられます。
一般的に、疲れはよくないというイメージもありますが、“休みなさい”という体が発するメッセージであり、生きていくために必要な警報です。
疲れに深く関わる「活性酸素」
では、疲れている時に体の中ではどんなことが起きているのでしょう。実は、疲れの発生の際に中心的な役割を果たしているのが「活性酸素」です。
私たちの細胞には血液によって栄養と酸素が運ばれ、その栄養を酸素で燃やして、活動のためのエネルギーをつくっています。酸素が燃える時に生じるのが活性酸素です。活性酸素は増え過ぎると細胞をさびさせて老化を進めますが、通常は体に備わっている抗酸化力が働いて、過剰な活性酸素を除去しています。
しかし、活動量が増えたり、ストレスや環境から心身に負担がかかったりすると、そのぶん細胞はがんばらなくてはならず、多くの酸素を使ってエネルギーをつくろうとします。その結果、活性酸素も大量に発生。体内の抗酸化力が追いつかず、細胞自体がさびついていきます。そうなると、細胞の中で栄養をスムーズに燃やすことができず、エネルギーの産生が落ち、疲れを感じるようになります。
休んでも回復しない慢性疲労の入り口に
通常の疲労なら十分な睡眠や休息をとれば、やがて回復します。休んでいる間に細胞の新陳代謝が行われ、さびた細胞の修復や交換により、十分なエネルギーがつくられるようにリセットされるからです。
しかし、何かと慌ただしい現代社会。疲れを感じていても、そのまま放置したり、無理をしたりして、疲労をため込んだままの人も少なくありません。そうなると、細胞のさびがさらに広がり、疲れは慢性化してたまる一方です。
特に持病などがないのに、下記の症状が増えてきたら、疲れが慢性化しているサインと考えられます。積極的に疲労回復のための時間を設け、休息をしっかりとりましょう。
よりよい疲労回復と予防のために
疲労の回復には、軽い運動や栄養補給、緑の香りや音楽などが有効であることは、様々な研究により科学的に実証されています。特に体に備わる抗酸化力は、加齢とともに低下する傾向があるので、栄養補給では栄養バランスとともに、抗酸化成分を様々な食品から補う工夫が大切です。
また、嫌なことがあった時、深刻に悩む人と受け流せる人がいますが、疲労度と「気の持ちよう」には明らかな因果関係があります。
そこで、ぜひ日ごろから心掛けていただきたいのが、下の3つのキーワード。生活の中に上手に取り入れ、疲れをためにくい体をつくりましょう。
1976年京都大学医学部卒業、1980年京都大学大学院修了。医学博士。現在、大阪市立大学健康科学イノベーションセンター・所長、大阪市立大学大学院医学研究科・システム神経科学・特任教授、関西バイオメディカルクラスター健康科学推進会議・議長を兼任。著書に『毎日の食事が疲れに効く!抗疲労食』(共著 オフィス・エル)などがある。