「血液力を高めるって、どういうことなのでしょうか。詳しく教えてください。」
「血液は猛スピードで全身を循環しながら、生命の維持に関わる大切な仕事をしています。 その血液の力は血液の〈質〉と〈流れ〉で決まります。スムーズに流れる質の良い健康な“血液力”こそ、体内ライフラインの根幹。しかし、食生活の内容で“血液力”は良くも悪くも変わります。そこで、歳を重ねるほどに意識したい“血液力”の重要性と、“血液力”を常に高めておくための食生活のヒントをご説明いたします。」
私たちの体重の約8%は血液。例えば体重50kgの人は約4kgの血液が、わずか50〜60秒で体内を循環しています。その血液が、質の良い状態でサラサラと流れていれば、全身に酸素や栄養がスムーズに届けられ、二酸化炭素や老廃物の回収もはかどります。しかし、血液の質が悪くドロドロの状態では血液の流れも停滞。血液力が高いか低いかで、全身の細胞の新陳代謝に大きな違いが表れてくるのは言うまでもありません。
また血液には、“全身に熱をめぐらせる” “様々なホルモンを必要なところに届ける” “ウイルスや細菌を撃退する免疫細胞を運ぶ” “血管の傷を修復する”などの重要な役割があります。
さらに、体の中で酸素とブドウ糖などを一番多く消費している脳の健康を支えているのも、もちろん血液力。そして、血液力が高いと、肌や髪のツヤも良くなり、スムーズに流れる血液は血管壁にも負担をかけないので、血管の老化予防にもつながります。
若々しさも健康も美しさも、私たちの体は血液力にコントロールされていると言っても過言ではありません。
血液の状態は目には見えませんが、血液力が低下すると、その影響は下記のような心身の症状となって表れてきます。まずは自分の血液力をチェックしてみましょう。
血液力に最も影響を与えるのは食生活です。何をどう食べるかで、血液はドロドロになったりサラサラになったりし、流れのスムーズさも変わります。食事の内容次第で、約2週間もすれば、血液の質は良くも悪くもなるといわれています。
そこでドロドロ血液にしないためにはまず、卵やレバーなどコレステロールを多く含む食品を控えようと思う人が多いようですが、実は食事でコレステロールを多く摂れば血中コレステロール値が高くなるわけではありません。
むしろ気をつけたいのは、糖質の摂り過ぎ。血液中に余った糖は中性脂肪に変わり、その中性脂肪が分解されてコレステロールが生み出されるからです。
コレステロールにはLDLとHDLがありますが、中性脂肪が多過ぎると、余分なコレステロールを回収するHDLが減り、LDLが血液中に増えてくることが分かっています。
ドロドロ血液とは、これらの糖や中性脂肪やLDLコレステロールが多い血液のこと。このような血液の状態で過ごしていると、増加したLDLコレステロールが体内を循環しているうちに酸化して超悪玉化。それらが血管壁にたまりやすくなり、動脈硬化が進んで、怖い病気につながる心配があります(下図)。
一方、栄養不足で血液が薄くなり過ぎるのも問題。酸素や栄養が十分に運べず、各機能が低下してしまいます。
基本は栄養バランスのいい食事を規則正しく、そのうえで「糖質を摂り過ぎない」ことです。動物性タンパク質や脂質も、血液には大切な栄養素。肉も魚も偏らずに食べましょう。野菜などに含まれるビタミン・ミネラル・食物繊維も質の良い血液のために欠かせません。
また、青魚のサラサラ成分・DHAとEPAは、血液の流れを良くし中性脂肪を減らす働きがあり、こうした成分を意識して摂る食生活で、血液力はいっそう高まります。
もう一つ、忘れてはならないのが活性酸素の悪影響。体内で増え過ぎると、血液ドロドロが加速します。緑黄色野菜のビタミンA・C・Eやゴマのセサミンなどの抗酸化成分を食卓に摂り入れ、体内の抗酸化力を高めておきましょう。なおDHA・EPAは酸化に弱いので、抗酸化成分と一緒に摂るのがおすすめです。
血液力を高めるには、適度な運動も大事。意識して体を動かす時間をつくりましょう。
1978年北里大学医学部卒業。東京女子医科大学消化器病センター内科に入局。東京女子医科大学教授、戸塚ロイヤルクリニック所長を経て現職。日本肝臓学会肝臓専門医。C型慢性肝炎に対するインターフェロン療法をはじめ、生活習慣病の治療で活躍中。『肝機能をしっかり高めるコツがわかる本』(学研パブリッシング)など著書・監修多数。