「若々しい肌、すこやかな肌をつくるためには、内外のケアが重要って、ホントですか?」
「肌は、“見た目年齢”を左右する大きな要素。同じように歳を重ねても、肌がきれいな人は若々しく見えます。肌には外側から受けたダメージも、体内の健康状態も如実に表れるので、若々しい肌をつくるためには、外からと内からのケアが重要です。特にこれからの季節は、乾燥と冷えに十分注意しなければなりません。そのために心掛けたい生活習慣について、ご説明いたします。 」
全身を包んでいる皮膚には、紫外線や細菌などの害から守ってくれるバリア機能という大切な役割があります。
皮膚にはほかにも、体温を維持したり、体内の水分を一定に保ったり、皮脂を分泌したり、痛みや熱さやかゆさを感じて脳に知らせたりなど、体の健康を守る重要な働きをしています(右図)。こうした体の外側の“臓器”としての役割が果たせるのも、最前線でバリア機能がしっかり働いているからこそです。
同様に、肌は外側からの様々な刺激に常にさらされているため、老化が最も表れやすいところでもあります。肌の老化の原因は様々ですが、歳を重ねるほど気をつけたいのが「乾燥」。この乾燥こそ、肌を荒らし、老化を加速させる最大の原因と言うことができます。
健康な肌は、適度な皮脂の膜によって、肌の乾燥を防いでいます(右図1)。しかし、加齢によって皮脂の分泌量が減ると膜が薄くなり、肌の水分が減少しやすくなるため、肌のうるおいと弾力が失われていきます(右図2)。
そうなると、本来のバリア機能が低下して紫外線や細菌などの影響を受けやすくなり、シミやシワ、かゆみなどの肌トラブルにつながる心配があります。また、表皮の古い細胞と新しい細胞が入れ替わるターンオーバーのスピードも遅くなるため、肌の細胞が元気を失って、たるみやくすみが表れやすくなります。
逆に言うと、肌が若々しい人は、肌が常にうるおっている人。いかに肌の乾燥を防ぐかで、“見た目年齢”が決まると言っても過言ではないでしょう。
皮膚は“内臓の鏡”ともいわれるように、血液と神経によって全身の臓器とつながっています。中でも特に関係が深いのが腸。腸の調子が悪いと、その影響はすぐ肌に出てきます。便秘が続くと肌が荒れたり、にきびができたり、肌の状態が悪くなるのはその表れです。
きれいな肌の条件として、表面にうるおいとハリがあり、血色が良いことが挙げられますが、解剖学的見地から言っても、ピンク色で健康な腸をもつ人は、肌にハリがあり、若々しい人が多いのです。反対に、腸の色がどす黒く、便の停滞がある人は、肌の状態も良くありません。
実際に腸の調子を整えたら、肌トラブルが治ったという例もたくさんあります。
腸は、偏食や運動不足、ストレスなど生活習慣の影響を受けやすい臓器ですが、思っている以上に大敵なのが「冷え」。体温が低い状態が続けば、腸の消化吸収力や免疫力が低下し、本来の働きができなくなります。ぜん動運動が弱くなり、排泄力が落ちれば、悪玉菌が増えて腸内の腐敗が進み、毒素などが全身にまわりやすくなります。その結果、吹き出物ができたり、シミやシワ、くすみ、クマが表れやすくなるなど、顔全体が老けた印象になってしまいがち。
また、冷えると血管が収縮するため、肌の血液循環も悪くなり、クマができやすく、顔色もすぐれなくなります。衣食住の工夫で、冷えを遠ざける生活習慣を心掛けましょう。
実は、「乾燥」と「冷え」の怖いところは、自覚しないことも多く、気づかないまま肌の老化がじわじわと進んでしまう点。例えばエアコンの風は、思っている以上に肌を乾燥させます。入浴後の乾燥も要注意。皮脂が洗い落とされ、表面の水分が気化する時に肌のうるおいが奪われます。
冷えの原因も寒さだけではありません。日常的に冷たい物を飲食していれば、体は冷えやすくなります。体の熱は筋肉でつくられますから、運動不足も一因に。さらに睡眠不足やストレスが多い生活は自律神経のバランスを崩し、血行不良や低体温につながります。
そこで、ぜひ下記の生活習慣を日常に取り入れてみてください。毎日続けていれば、その積み重ねに、肌は本来の美しさで応えてくれるでしょう。
浜松医科大学卒業、同大学皮膚科入局。富士宮市立病院皮膚科医長在任中、漢方治療の第一人者・二宮文乃医師に師事。北里東洋医学研究所にて東洋医学を習得。静岡県島田市に「あらなみクリニック」、千葉県船橋市に「あらなみクリニック分院」を開院。皮膚科医・漢方医・日本皮膚科学会認定専門医。著書に『人の寿命は「肌」でわかる、「腸」で決まる』『さらば薄毛、最強の自毛復活プロジェクト!』(ともにワニブックス)など。