免疫の基礎知識

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きちんと知っておきたい「免疫の基礎知識」

Q

「最近、感染症などのニュースで『免疫』という言葉をよく耳にしますが、
 『免疫』って、どんな仕組みなのでしょうか?」

A

「免疫とは『疫病を免れる』こと。文字通り、私たちの体を病気から守るために備わった大切な機能です。ただ、よく耳にしながらも、その仕組みについては、意外にご存じない方も多いのではないでしょうか。 風邪やウイルスなどによる感染症への防衛策として、免疫のシステムと働きを知っておきましょう。」

あなたの「免疫力」をチェック 心当たりが多くあれば、免疫力が低下ぎみのサインです。 食生活など、生活習慣の工夫で、免疫力の強化に努めましょう。 近ごろ、風邪を引きやすく、治りにくい
 切り傷、擦り傷の治りが遅くなった 疲れやすくて、体がだるい のどがはれやすい 口内炎やものもらいがよくできる 肌が荒れやすい

そもそも「免疫」とは…

<免疫が働いている主な場所> 目・口・鼻・のど 皮膚・血管・リンパ管・胸腺 脾臓・骨髄・腸管自然免疫系と獲得免疫系の違い 自然免疫系 免疫反応 どんな敵に対してもすぐ反応し、ただちに排除 抵抗性 感染を繰り返しても変化しない  獲得免疫系 免疫反応 敵の情報を分析し、敵ごとに攻撃法を判断 抵抗性 感染を繰り返し、さらに強くなる

自分で自分を守る二重の防衛システム
  免疫とは、ひと言でいえば、自分の体内にこれまでなかった異物を見つけ、攻撃・排除する機能 です。そのおかげで、私たちは細菌やウイルスに感染しても、症状が出なかったり、出ても一時的なもので済み、やがて治すことができるのです。こうした免疫の働きは、大きく二種類に分けることができます。


「自然免疫系」は生まれつき備わった常設部隊
  一つめは、体に本来備わっている「自然免疫系」で、四六時中、体を見守っている常設部隊です。その最前線が、外界のバイ菌と常に触れている皮膚や、涙、粘膜です。鼻や口に異物が入ると咳やくしゃみが出るのも免疫反応です。殺菌力のある唾液や胃液、悪い菌を排除する腸内細菌も、常に侵入してくる敵と戦っています。
  さらに自然免疫系には、血液やリンパ液の中を流れて全身を巡回し、変異した細胞を破壊する部隊もいます。


「獲得免疫系」は敵と戦い鍛えられた精鋭部隊
  しかし敵が手強く、自然免疫系だけでは守りきれなくなると、精鋭部隊である「獲得免疫系」の出番です。自然免疫系がキャッチした敵の情報を分析し、その病原体のちからを奪う抗体を作って攻撃します。
  しかも獲得免疫系は、戦った敵のデータをすべて記憶し、次回からはより早く、多くの抗体を作って、戦うたびに強くなります。はしかなどに一度かかると二度とかからないのはそのおかげです。

 

  こうして人類は、新しい病原体に出会っても、免疫を獲得し、強くなることで、ここまで生き延びてこられたのです。

「二つの免疫系の連携が大事です」

ただし、免疫力は生活習慣に大きく左右されます

免疫力は年齢とともに低下 感染症などにかかりやすくなります 参考:『からだと免疫のしくみ』(上野川修一著 日本実業出版社)
(Goldstein A.L.,et al.,“Physiology and Cell Biology of Aging.” Raven Press(1979)より)

年齢を重ねるほど、毎日の生活習慣が影響
  自然免疫系と獲得免疫系、二つの防衛システムが常に連携しながら体を守っていますが、残念ながらこの免疫機能の働きは、ほかの体の機能と同様に、年齢とともに低下していきます(右グラフ)。
  しかし、お年寄りでも病気知らずの人や、若くても風邪を引きやすい人がいるように、免疫力は個人差が大きく、また思っている以上に生活習慣や環境に左右されます。中でも偏った食事、ストレスの蓄積、睡眠不足、たばこ、化学物質などは、免疫力を弱らせる大きな要因です。
  特に免疫力が低下しやすい中高年の人ほど、生活習慣による影響は大きいといえるでしょう。


免疫力が低下すると様々なトラブルが
  免疫力が低下すると、鼻やのどの粘膜の抵抗力が落ち、炎症が起きやすくなったり、風邪やインフルエンザなどにもかかりやすくなります。 そうならないように、日ごろから免疫力を鍛えておくことが大切です。

免疫力を低下させる主な原因 加齢 体全体の機能が低下し、免疫細胞を作り出す働きだけでなく皮膚などのバリア機能も衰えます。 ストレス 脳がストレスを感じると、神経系から免疫の働きを抑える物質が放出されることが分かっています。 環境ホルモン 大気中に流出する化学物質や農薬などの中には、免疫に悪影響を及ぼすものが少なくありません。 睡眠不足 免疫細胞は夜寝ている時に骨髄の中で作られます。睡眠不足は免疫力低下に直結します。 喫煙 有害物質を常に呼吸器に入れている状態ですから、免疫機能にとっては大敵です。 食生活 偏食すると免疫力の維持に必要な栄養成分が不足しやすく、また高脂肪の食事に偏ると免疫の働きが低下します。

全身の免疫細胞の約60%が集まる「腸」の働きがカギ

いくつになっても免疫力は鍛えることができる
  免疫力を鍛えるには、上に挙げた生活習慣や環境などで当てはまるものがあれば、改善することが大切です。免疫力は日々の過ごし方で低下もしますが、改善することで回復も図れます。
  言い換えれば、食生活の改善や十分な睡眠、ストレスをためないなど、生活の工夫でいくつになっても鍛えることができるのが免疫力なのです。

腸の免疫力を鍛えて全身の守りを固める
  そしてもう一つ、ぜひ心掛けていただきたいのが腸の健康です。なぜなら、腸は体内にある免疫細胞の約60%が集まっている、人体で最大の免疫器官だからです。
 食べたものから体を作る私たち生命体にとって、その栄養を吸収し、不要なものを排出している腸は、生きていくための重要な器官。同時にウイルスや細菌にとっては、食物に紛れて最も侵入しやすい場所でもあります。そのため腸では、侵入してきた病原体や異物が栄養と一緒に体内に吸収されないように、最大規模の免疫が働いているのです。  
  しかし、生活習慣や食事が偏り、腸内環境が悪くなっていれば、腸の免疫力も本来のちからを発揮することができません。日ごろから腸の調子を整えておくことは、免疫力を強化しておくための重要なポイントです。

免疫力を鍛える基本は毎日の食事 乳酸菌は免疫系に良い刺激を与える 乳酸菌が免疫細胞を活性化することは、臨床実験を通じて明らかになっています。 タンパク質は免疫の基礎体力 免疫細胞や抗体はタンパク質で作られています。1日3度の食事で良質なタンパク質を摂りましょう。
 免疫力を上げるビタミンやミネラルを 特にビタミンA・B・C・Eや、亜鉛、セレンは免疫の働きを活性化するために大切です。
「免疫力をしっかり備え、元気でアクティブな毎日を! 免疫力が高まると… 病気にかかりにくい、かかっても軽度で済む 気持ちが前向きで、行動もアクティブに 体に自信をもてるから、意欲や気力も充実
監修/上野川 修一先生
監修/上野川 修一先生 日本大学生物資源科学部教授・東京大学名誉教授 農学博士

東京大学農学部農芸化学専攻修了。東京大学大学院農学生命科学研究科教授を経て現職。専門は食品免疫学・腸内細菌学・食品機能学。紫綬褒章(2008年)、日本農芸化学会賞(2000年)、国際酪農連盟賞(2006年)を受賞。著書に『免疫と腸内細菌』(平凡社新書)、『食品とからだ 免疫・アレルギーのしくみ』(朝倉書店)、『爆笑問題のニッポンの教養』(講談社・共著)などがある。

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