あなたの汗は、良い汗? 悪い汗?

サントリーは健康を科学する健やかな生活のための「教えて!先生」情報をお届けします。

「あなたの汗は、良い汗? 悪い汗?」

Q

「汗のかき方は全身の健康にも影響するって、ホントですか?」

A

「じめじめと蒸し暑い梅雨は汗っかきの人にはつらい季節ですが、実は汗にも“良い汗”と“悪い汗”があるのをご存じでしょうか。良い汗は蒸発しやすく、保湿作用もあるので美肌づくりにも役立ちます。一方、悪い汗は蒸発しにくいうえ、雑菌も繁殖しやすく体臭のもとになることも…。そこで今回は、良い汗のかき方についてご説明いたします。」

汗のかき方で健康状態も変わります 良い汗は…サラサラしている/汗の粒が小さい/蒸発しやすい/におわない/かくとスッキリ! 悪い汗は…汗の粒が大きい/ベトベトしている/汗臭い/蒸発しにくい/かくとグッタリ!

汗をかいて体温調節できるのは、人間だけ

 汗は、蒸発する時に体の熱を外に逃がすことで体温の上昇を防ぐ、体に備わった大切な機能。あまり知られていませんが、動物の中で汗をかいて体温調節ができるのは、人間だけです。
 人間の脳は高度な知性を司る大脳を発達させることで進化してきました。しかし、脳細胞は温度の変化に敏感で、とりわけ高温には弱いのです。その脳を熱から守るため、暑い時に体の熱を放散する特別な体温調節器官が必要となり、人類は脳とセットで汗腺を発達させてきました。
 汗をかくことは、脳にとって大変重要なことなのです。

かきたての良い汗は、サラサラで無臭

 では、良い汗と悪い汗の違いは、どこにあるのでしょうか?
 汗は、血液からつくられています。その際、血液に含まれる体に大切なミネラル分などは、ろ過して血管に戻しています。このろ過機能がきちんと働いてできるのが、良い汗(下左図)。水のようにサラサラしてにおいがなく、蒸発しやすいので、少ない量でも効率良く体の熱を放散してくれます。
 ところが、うまくろ過することができないと、血液のミネラル分が汗とともに流れ出てしまいます。これが悪い汗で、ミネラル分を含んでいるため、ベトベトして蒸発しにくく、熱をうまく放散できません(下右図)。そのため大量に汗をかくことになり、かくたびに血液中のミネラル分が失われるので、疲労感が増大。夏バテや熱中症を招きやすくなります。
 つまり、汗腺のろ過機能が、きちんと働いているかどうかが、良い汗になるか悪い汗になるかの分かれ道になるのです。

汗をかく仕組み 全身の約400〜500万の汗腺のうち、実際に働いているのは半数程度で、それらの汗腺も、ろ過機能が退化すると「休眠汗腺」になる心配があります。良い汗:血液のミネラル分を血管に戻すので、限りなく水に近い汗に。悪い汗:血液のミネラル分が血管に戻らず、汗とともに出てしまう。汗のかき方は、全身の健康にも影響してきます!

良い汗は、内外からキレイな体をつくる

 良い汗は、体温調節だけでなく、体内の浄化や美肌づくりにも役立ちます。
 良い汗をかくと代謝が高まり血行が促進。老廃物の回収や排せつもスムーズです(下図)。また良い汗をかけば、皮脂の分泌も盛んになります。新しい皮脂と粒の小さな汗によって質の良い皮脂膜が形成されて、肌がしっとりスベスベに。皮脂膜には、肌の乾燥を防ぎ、細菌などの侵入を防ぐバリア機能もあるので、肌と全身の健康を守ってくれます。
 一方、悪い汗はミネラル分が皮膚に残り、それが皮脂腺にたまって酸化した古い皮脂と結びつくと、雑菌が繁殖。においが発生しやすくなり、肌にも良くありません。
 汗がベタつく時は、乾いたタオルではなくぬれタオルで拭くと、余分な皮脂や汚れが取れてスッキリします。

良い汗をかくと、体のめぐりが良くなる! 良い汗をかく → 血行が良くなる 代謝が盛んになり、血流がアップ → 老廃物の回収が進む 血液が体内の老廃物を回収し腎臓へ → 老廃物を体外に排せつ 尿と一緒に老廃物を体外に出す → 体内が浄化される 老廃物がたまりにくいキレイな体に → 細胞がイキイキと働く 各組織の細胞が元気に働くようになる 疲れにくい、たまりにくい好サイクルが生まれます!

歳を重ねてからでも、汗腺は鍛えられる

 汗腺は生まれた時から備わった大切な機能ですが、ろ過機能がきちんと働いて、良い汗がかけるかどうかは、年齢ではなく、どんな環境で生活しているかによって大きな個人差があります。
 近年は、エアコンの普及で暑い夏でも汗腺を働かせる機会が減ってきました。筋肉を使っていないと衰えるのと同様に、あまり汗をかかない生活をしていると、汗腺のろ過機能は退化して、良い汗がかけなくなってしまいます。
 しかし、運動や入浴などで積極的に汗をかき、汗腺を刺激する生活を続けることで、歳を重ねてからでも汗腺のろ過機能は高めることができるのです。
 ぜひ今日から、下図のような良い汗をかくための生活習慣を取り入れましょう。

良い汗をかくための生活習慣: 良い汗をかくための答えはいたってシンプル。汗をかき慣れることです。汗腺は退化しても、鍛えることで機能が回復してくるので、下記の生活習慣をぜひ取り入れてみてください。 冷房の設定温度は外気温−5℃以内に:急激な温度差は汗腺疲労を招きます。扇風機を活用し、やさしく体の熱を逃がしましょう。 ウォーキングなどで体を動かす習慣を:日ごろから積極的に体を動かし、汗をかく機会を増やしましょう。
良い汗をかくことは、元気に暮らすための基本です!