
「腸バテ」って、耳慣れない言葉ですが、「腸バテ」が続くと、
様々な病気を引き起こすってホントですか?

腸が疲れ、弾力性を失い硬くなってしまう「腸バテ」の人が、近年増えています。
便秘などに悩む人が急増しているのも、その表れ。
腸の働きは免疫力とも密接に関わっており、
腸バテが慢性的に続けば、様々な病気にかかりやすくなります。
日ごろから、もっと腸の健康に目を向けましょう。

体に必要な栄養素を取り込み、有害物質を便として排出する腸は、私たちの健康を根幹から支えている器官。
でも、腸の役割はそれだけではありません。腸には全身の免疫細胞の約6割以上が存在しており、外部から侵入したウイルスや病原菌などから私たちの健康を守る重要な仕事があります。
その一方、腸は思っている以上にデリケートな器官。上図のような生活習慣の影響によって、腸の働きはすぐに低下して硬くなってしまいます。
腸バテの自覚症状は慢性的な便秘や下痢、おなかの張りですが、実際に患者さんの腸を診ると、悪玉菌が作り出した有害物質がたまり、腸内環境が悪くなっています。
こうした状態が続けば、腸内の免疫細胞の働きも弱くなり、腸の病気はもちろん全身の様々な病気を引き起こす心配があります。
歳を重ねると、腸がバテやすくなる傾向がありますが、腸の健康状態は年齢よりもむしろ個人差が大きく、高齢でも腸内環境が良好な人は、元気で若々しい人が多いようです。
実際にそのことを裏付ける調査報告(下図)もあり、腸の健康は長寿につながることも明らかになりつつあります。


一口に腸バテといっても、実は若い世代とシニア世代とではその原因に大きな違いが見られます。
若い世代は、朝食抜きなどの不規則な生活や睡眠不足、ストレス、無理なダイエットなどが主な原因。つまり、便として出すべきものが足りていないため便秘になりがちです。
一方、シニア世代になると、加齢や筋力の低下によって腸の弾力性が失われ、ぜん動運動など腸管自体の機能が少しずつ衰えてくるため、便通が悪くなってきます。
また、歳を重ねると腸内細菌のバランスも変化し、善玉菌が減って悪玉菌が増えやすいことが分かっています。
こうした生理的な変化に加えて、高齢になると食欲も低下しがちで、腸に必要な栄養や水分が不足していることも少なくありません。
ですから腸バテ対策も若い世代とは異なり、腸管機能の維持・腸内細菌のバランス・腸に良い食事の三本立てで考える必要があります。

三本立ての中心になるのが毎日の食事。1日3食、栄養バランスの良い食事が基本ですが、より良い腸内環境をつくるために積極的に摂りたいのが、もち麦ごはん(米2:もち麦1の比率)や野菜、きのこ、海藻類など「食物繊維」が多く含まれる食品と漬物などの植物由来の乳酸菌で作られた「発酵食品」です。
食物繊維は善玉菌のエサになり、腸のぜん動運動を活発にして排便を促す働きがあります。
発酵食品にはヨーグルトやチーズなどの動物由来の乳酸菌がありますが、植物由来の乳酸菌は生命力が強いのが特長。中でも乳酸発酵させて作った昔ながらの漬物は、食物繊維も一緒に摂れる利点があり、免疫機能に役立つ乳酸菌の働きも近年注目されています。
また、腸管機能の働きを良くするためには、下半身を動かしたり、温めたりするのも有効な手段です。
まずは、下記で紹介する3つの習慣から始めてみてください。毎日続けていると、腸が元気に働くようになるでしょう。




東京慈恵会医科大学卒業。同大学第三病院内科助手、松島病院大腸肛門病センター診療部長などを経て、2004年、東京都立川市に松生クリニックを開業。現在までに4万件以上の大腸内視鏡検査を行ってきた第一人者。『腸の免疫力を上げれば寿命がのびる!』(廣済堂出版)など著書多数。