肌の老化が加速する
「不安定肌」って、どういったことでしょうか?
肌がピリピリする、カサつく、赤みやかゆみもある、
肌の調子も整わず、化粧ののりも決して良くない…。
夏の終わりから秋口は、こんな「不安定肌」に最もなりやすいシーズンです。
加齢や気候の変化などにより、肌が外部からの刺激に敏感になり、肌の老化が加速します。
そこで、この時季に手を抜いてはいけない、大切なケアのポイントを皮膚医学の専門ドクター
である、私がご説明いたします。
夏の間に強い紫外線と闘って疲れた肌は、外の刺激から肌組織を守るバリア機能が低下しやすくなっています。
そんな状態の肌を洗顔でこすり過ぎたり、栄養や睡眠が不足していたり、急に秋の乾燥した空気にさらされたりしていると、肌を守る皮脂膜が知らずしらずのうちに薄くなり、普段は大丈夫なホコリや汗、シャンプー、化粧品に対しても刺激を感じることが多くなってきます。肌が敏感になっているのに、ただいつも通りのスキンケアを続けていたり、弱った肌には何もつけない、保湿も化粧水だけといったケアをしたりしていると、さらにバリア機能が低下し、角層の水分も逃げやすくなります(図1)。
一方、肌は刺激を感じて傷んだ組織を早く回復しようとターンオーバーを速めますが、短か過ぎる周期でつくられた未熟な角質細胞では、角層はさらに弱体化して細胞の並びも乱れ、角層などの中に“すき間”ができたような状態になってしまう危険があります(図2)。いつも使っている化粧品でも肌がピリピリしたり、十分寝たのに朝は肌が乾いて疲れていたり。赤みやかゆみ、肌のキメが粗くなっているなどの肌トラブルを感じる人も少なくありません。
それは肌が敏感になっている上、中の水分がどんどんすき間から逃げていき、肌の奥から乾燥する「不安定肌」になっている可能性があります。
本来、肌のバリア機能や再生力は年齢とともに低下しがちといわれています。そのぶん、夏の終わりから秋口は年々「不安定肌」になりやすい心配があります。少しでも「不安定肌」だと感じたら、年齢に合った正しいスキンケアをしているのか見直しましょう。
スキンケアの3本柱「洗う、補う、守る」も、肌に良いと思って普段何気なく繰り返していることが、逆に肌の刺激になっていないか、まずはもう一度見直してください。
洗顔はごしごしこすったり、熱いお湯で洗ったりしていませんか。保湿には水分を逃さないために大切な脂分を含むクリームなどをきちんと与えていますか。秋になったからとUVケアや美白ケアをおろそかにしていませんか。「不安定肌」が長引いて肌の奥から乾燥が進めば、肌は弾力も再生力も失って、小ジワやごわつき、くすみなど、肌の老化が加速することになります。そうなってしまうとなかなか健康な肌に戻りにくくなるので、歳を重ねるごとに、この時季の「不安定肌」の正しいケアが重要になってきます。
敏感でデリケートな「不安定肌」だからこそ、赤ちゃんの肌のように、いつも以上にやさしく扱ってあげるのが大原則です。次項目のようなていねいなケアを続ければ、バリア機能が整い、健康で潤いのある肌を取り戻すことができます(図3)
顔は、肌にやさしい洗顔料をしっかりと泡だて、手が肌に触れないようにそっとやさしく洗いましょう。
角層の保湿機能が失われている「不安定肌」にとっては、洗顔後の十分な保湿ケアが何よりも重要です。化粧水や美容液をたっぷりと与え、セラミドなどの保湿成分を含むクリームなどで密封して蒸発を防いでください。セラミドは、角層内の水分を逃さないように保ちながら、角質細胞同士を密着させる中心的な役割を担っており、たっぷり与えることで、潤いが逃げにくくなり、バリア機能の維持につながります。
バリア機能を低下させる紫外線は一年中降り注いでいるので、UV&美白ケアも、肌を安定させるために大切です。さらに、下のような生活習慣にも気を配り、内外からのケアをていねいに続けてみずみずしい肌をつくり直してください。
たとえ年齢を重ねた肌でも徹底保湿を根気よく続けると、肌の奥から甦よみがえります。空気が乾燥している季節でも、セラミドなどが水分を離さずにしっかり保湿機能を保ってくれるので、潤いをキープでき、ターンオーバーの周期も安定してきます。
保湿によって角層の状態が健康になれば、自然にハリが生まれてきます。このように肌のベースが甦ると、美容成分が行き渡る環境が整い、スキンケアの成果が出やすい肌を手に入れられるはずです。
1977年東邦大学医学部大学院修了。東邦大学医学部講師、同准教授、東邦大学大橋病院皮膚科部長、美容医学センター長、栄養部長、院長補佐を経て現職。皮膚科専門医、抗加齢医学専門医、温泉療法医、日本皮膚科学会評議員、日本美容皮膚科学会理事、日本毛髪科学協会理事長ほかを歴任。著書に『敏感肌の診療』(メディカルレビュー社)、『美容のヒフ科学 改訂9版』 (南山堂)など。