肥満型とやせ型の体形は、
人の腸の中にある腸内細菌が
関係しているって、ホントですか?
運動しても食べる量を減らしても、なかなか減らないとお悩みの方も多いおなかの脂肪。
しかし、一方では、同じぐらい食べて、特別な運動をしているわけではないのに
太らない人もいます。どうしてなのでしょうか?
実は、腸内環境に秘密があったのです!
その秘密を、腸の専門家である、私がご説明いたします。
同じ親から生まれ、生活環境が同じで遺伝子的にも一致しているのに、一人は肥満型で、一人はやせ型になった一卵性双生児がいました。体形は遺伝に影響されると思われてきたのに、なぜそんな違いが?
この疑問を追究し、世界的権威の科学雑誌に載った研究結果が世界を驚かせました※1。実は腸の中の世界がまったく違っていたのです。ぽっちゃりさんの腸内では、エネルギーため込み型で脂肪を蓄えたがる細菌部隊が優勢になっており、ほっそりさんの方は脂肪や糖がそんなに好きではない細菌部隊が優勢だったことが分かりました。
そこで二人の便を使った研究が行われ、体形は遺伝より、腸内細菌の種類が決めていることが判明したのです※2。人の腸には肥満型の細菌部隊とやせ型の細菌部隊の二大勢力があり、いつも陣地を奪い合っていることも分かりました。
中高年になるほど、減らしにくいおなかの脂肪に悩まされるものですが、下のようなチェック項目に心当たりが多いほど、腸内が肥満型細菌部隊に占領されているかもしれません。
肥満型細菌部隊が優勢になるか、やせ型細菌部隊が勝利を収めるか、勢力争いの結果はどうやって決まるのでしょうか?
答えは、もともとあなたの腸の中で悪玉菌が元気か、善玉菌が元気かにあります。
人の腸の中には約100兆個の腸内細菌がすみついており、健康な体を維持するために、腸内細菌の働きに助けてもらっています。ですから、悪玉・善玉といってもどちらも必要な菌です。ただし、過剰にタンパク質や脂肪、糖を摂ると、これらを積極的に食べては増え、増え過ぎると有害物質を出す一群がいて、こちらを便宜的に悪玉菌と呼んでいます。一方、食物繊維(水溶性)をせっせと食べて健康に有用な働きをしているビフィズス菌や乳酸菌などの一群を善玉菌と呼んでいます。
問題は、悪玉菌と善玉菌とのバランスです。悪玉菌1・善玉菌2・中間菌(日和見菌)7の割合が理想的です。人間社会でも中間層は、時代の状況に敏感に反応して動くものですが、腸内細菌の世界でも同じことが起こります。悪玉菌が多い時には、肥満型細菌部隊が加勢して、どんどん悪玉菌が大勢力に。やせ型細菌部隊は居場所がなくなり、ダイエットしてもやせられないということになるのです。
反対に、善玉菌が多い時には、やせ型細菌部隊が敏感に加勢して、善玉菌が大勢力になり、太りにくい体を保つというわけです。
とかく脂肪や糖を摂り過ぎがちな現代の食環境においては、おなかの脂肪が気になる人ほど、やせ型細菌部隊が活躍する善玉菌勢力の腸を育てておくことがポイントになりそうです。
「もしかしたら私の腸は肥満型かも?」と悩んでいませんか? でも大丈夫です。腸内の細菌部隊の勢力は、2週間でひっくり返せることが判明しています。
なぜなら、食事で善玉菌を元気にすることができるからです。やせ型細菌部隊の好物で善玉菌を元気にする食物繊維(水溶性)や、ビフィズス菌・乳酸菌を含む発酵食品を積極的に摂りましょう。腸内細菌は自分たちの繁殖に都合のいいエサを得て数を増やしていきます。
食生活を見直せば、善玉菌が増えます。ただし、腸内細菌のバランスは食事の内容で良くも悪くもすぐに変わり、元に戻ることもあるので、良い食生活の継続が重要です。下記のような食生活を続けていきましょう。
日本大学医学部卒業。日本大学板橋病院消化器外来医長、日本大学医学部准教授を経て現在に至る。厚生労働省薬事食品衛生審議会専門委員、内閣府食品安全委員会専門委員、日本消化器病学会評議員、日本高齢消化器病学会理事などを歴任。著書に『大腸活のすすめ』(朝日新聞出版)など。